居候部屋の本棚
あるいは,積ん読本リスト


1998年上半期



池澤夏樹
『ハワイイ紀行』
新潮社 1997年第9刷(1996年第1刷) 2100円
[1月5日]
●書を捨てて海に出よう.BGMはビーチボーイズならぬ,イズラエル・カマカウィウォオレの「フェイシング・フューチャー」.ちなみに「ハワイイ」は誤植にあらず.ハワイ語の発音は日本語のローマ字読みに近いとか.
●BGM はハーブ・オオタさんでもよい? ――ハワイイがらみの音盤はオオタさんのウクレレものしか持っていない庵主


J−P・サルトル
『嘔吐』
白井浩司訳 人文書院 1997年改訳新装初版第5刷(1994年改訳新装初版第1刷,1951年初版第1刷) 2200円
[1月20日]
●結局実存主義は日常に嘔吐してしまう.日常を軽視してしまう.それで良いのか.でもそれはそれで,形而上学の伝統に挑戦してるのだ.……よくわからない.
●戦略的に日常を軽視するってのはアリだけど……そうつぶやく拙者には日常しかない。非日常なんてどこにある? ――庵主


ツヴェタン・トドロフ
『歴史のモラル』
大谷尚文訳 叢書・ウニベルシタス 法政大学出版局 1993年初版第1刷 3811円
[1月20日]
●「価値への関係」と「価値判断」との区別.それが小生を悩ませる.
●「価値」なるものは、社会学徒だったころの拙者の興味関心のひとつであった、それがいまや……ま、あんまり変わってないかも、そのころと。――庵主


菅啓次郎
『トロピカル・ゴシップ』
青土社 1998年第1刷 2600円
[2月6日]
●エキゾティシズムの肯定的解釈.旅のノスタルジー.


西原理恵子/勝谷誠彦
『鳥頭紀行ジャングル編』
スターツ出版 1998年初版第1刷 1000円
[2月11日]
●りえぞお先生との邂逅.キングオブ雑,はせぴょんに脱帽.
●写真撮りのかっちゃんはいまも元気にやってるかな。――庵主


W・S・モーム
『読書案内』
西川正身訳 岩波新書 1970年第26刷(1964年第20刷改版,1952年第1刷) ?→100円
[2月21日]


大江健三郎
『万延元年のフットボール』
講談社 1967年第1刷 490円→300円
[2月21日]
●食わず嫌いならぬ読まず嫌いはよくないと思いつつ、大江健三郎は拙者の読まず嫌いの最右翼の一。――庵主


筒井康隆
『東海道戦争 幻想の未来』
筒井康隆全集1 新潮社1983年1500円→500円
[2月21日]
●断筆のきっかけとなった「無人警察」収録.これを「差別」的でないと言ったら強者の論理になるだろうが,それは個人的な読後感の話.って言い切っ てみた.


菅啓次郎
『コロンブスの犬』
ラテンアメリカ・シリーズ5 コレクション・ブラジル4 弘文堂 1989年初版第1刷 2880円
[2月26日]
●著者全3冊の中で実はこれが1番説教臭くないかも.


ゴーギャン
『オヴィリ』
ダニエル・ゲラン編 岡谷公二訳 みすず書房 1980年 4000円
[3月2日]
●菅啓次郎『トロピカル・ゴシップ』からの派生.


片山一道
『ポリネシア
 海と空のはざまで』
東京大学出版会 1997年初版 2600円
[3月2日]
●太平洋のダイナミクス.池澤夏樹『ハワイイ紀行』からの派生.


高橋均/網野徹哉
『ラテン・アメリカ文明の興亡』 
世界の歴史18 中央公論社 1997年初版 2524円
[3月2日]



レオン・レーダーマン
『神がつくった究極の素粒子』
上・下
高橋健次訳 草思社 1997年第1刷 各2200円→?
[3月28日]
●まずは物は存在するってのが物理学の大前提.ここで,物ってホントにあるの? と問うてはいけない.いや、いいのだ.


瀬戸内寂聴
『孤高の人』
筑摩書房 1997年初版第1刷 1400円→?
[3月28日]
●俗なるものの拒絶.ロシア文学者,湯浅芳子の評伝.あるいは女性文壇相姦(?)図.以後チェーホフは彼女の訳本を手に入れることに.


原真
『快楽登山のすすめ』
東京新聞出版局 1997年初版 1700円→900円
[4月3日]
●居候部屋でくすぶり続けて,もうどれくらいになるだろう.記憶をたどれば,「山」を快楽だと思ったのなんてほんの一瞬だったように思う.逃げ出したい衝動との葛藤,その正−反−合が小生の山登りだった.(という過去形を現在形にしようということで購入.)『岳人』(東京新聞出版局)連載エッセイの集積.
●そういやクライミングのトレーニングってのはどうなったんだらう。――庵主


浜渦辰二
『フッサール間主観性の現象学』
創文社 1995年第1刷 7000円
[4月7日]
●第2部は「他者の現象学」.そこまでの道は果てしなく遠い.
●フッサールといえばシュッツ、シュッツといえば現象学的社会学、現象学的社会学といえば……自爆。――庵主


原将人
『父と子の長い旅』
フィルムアート社 1994年初版 1800円→1300円
[4月7日]
●著者初の劇場映画「20世紀ノスタルジア」の初期構想.俳句(定型詩)と映像の連鎖との相関性.著者曰く,「俳句は現代のコンパクトカメラ.今の人が旅行に行って写真を撮るがごとく芭蕉は俳句を詠んだ.そのうち人はビデオカメラを持って旅に出るだろう」.20世紀バンザイ.


黒沢清
『映像のカリスマ』
フィルムアート社 1992年第1刷 2680円→1500円
[4月22日]
●著者曰く,「あらゆる映画は音楽への限りない嫉妬でできている」.映画はストーリーじゃない.空間の妙なのさ.ちなみに小生の98年映画ベスト1は同監督「蜘蛛の瞳」なり.ところで,エドワード・ヤン監督「クーリンチェ少年殺人事件」(台湾)の上映前に写真家,橋口譲二と黒沢清の対談があった(4月24日).橋口は「あの混沌とした時代はかつて日本にもあって,今の日本の豊かさはつい最近のものなのだ.若い人にはそれを知って欲しい」と訥々と語ったのに対し,黒沢はポツリと「自分は何不自由なく生きてきたけれども満たされないものがあって,それが何故満たされないのかを描きたい」と言った.説教オヤジと化した橋口に対し,黒沢の発言はまさしく「蜘蛛の瞳」であり,居候部屋で鬱屈する小生の心であった.


つげ義春
『ねじ式』
小学館文庫 1995年4月初版第2刷(1月初版第1刷) 600円→380円
[4月22日]
●所収の「ゲンセンカン主人」.小生行きつけ古本屋「げんせん館」の由来ってこれかな?
●これでしょう(キッパリ)。これ以外には考えられないんだけど。――庵主


内田春菊(画)/
山村基毅(原作)
『クマグスのミナカテラ』
新潮文庫 1998年 743円→450円
[4月22日]
●南方熊楠の伝記(途中まで.つまり未完の作).日経でマンガ評論家,村上和彦が紹介.


藤井省三
『中国映画を読む本』
朝日新聞社 1996年第1刷 1500円
[4月25日]
●西洋人の東方趣味に媚びを売っているという,チェン・カイコー監督「さらば,わが愛/覇王別姫」への批判は,そのまま同監督「始皇帝暗殺」にも当てはまってると思う.(且つ、コン・リーの使い方がマンネリ.)ところで,98年に見た中国語圏映画,ウォン・カーウァイ監督「ブエノスアイレス」(香港),ツァイ・ミンリャン監督「青春神話」「河」(台湾),ホウ・シャオシェン監督「憂鬱な楽園」(台湾)に共通していたのは,彷徨感覚だった.しかし,全世界どこにでもいる華僑を思えば,それは彼らにとり行き場のない悲壮感ではないのだろう.それがちょっとうらやましい.
●超絶に多忙だった拙者の代わりに壮大なる駄作(なのか?)「始皇帝暗殺」を観に行ってくれてありがたう。――庵主


フロイト
『夢判断』
上巻
高橋義孝訳 新潮文庫 1997年第56刷(1969年第1刷) 552円
[4月30日]
●子供の頃よく見た夢.それは家に帰ったら知らない家族が住んでいるというもの.子供の頃からよく見る夢.それは気持ちよく空に飛んだは良いけどまっ逆さまに落ちてしまうというもの.解釈.下巻を買う日は来ない.


近藤恒一
『ペトラルカと対話体文学』
創文社 1997年第1刷 3500円
[5月1日]
●ペトラルカはここまで熟読されて幸せだろうなぁ.死んだあと誰かに,自分の日記や手紙を丁寧に理解して欲しいと思うか否か.……欲しい(かも).そういえば、ガンディーにも対話編がある.
●まかせたまえ。大海に浮かぶイカダに乗ったつもりで。――庵主


藤井省三
『魯迅「故郷」の読書史』
中国学芸叢書 創文社 1997年第1刷 2800円
[5月1日]
●偉大なる中国大陸の近現代史.為政者による解釈の位置づけ.


菅啓次郎
『狼が連れだって走る月』
筑摩書房 1994年初版第1刷 2980円
[5月13日]
●手に入れたくても入れられないものへの欲望.浮遊する,憧れの感覚.観念と体験.場所の記憶.


小田亮
『性』
一語の辞典 三省堂 1996年第1刷 1000円→350円
[5月21日]
●バイアグラ・フィーバーの真相.


T・イーグルトン
『新版 文学とは何か』
大橋洋一訳 岩波書店 1997年5月第2刷(2月第1刷) 3600円→2500円
[5月22日]
●『文学部唯野教授』の種本.庵主氏が同著者『表象のアイルランド』(紀伊国屋書店)を読み終えるまでは積ん読の誓い.それが居候としての仁義なり.(庵主よ,早く読め!)
●ふあー。――庵主


西原理恵子
『まあじゃんほうろうき』

上・下
竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト 竹書房 1996年初版第1刷 各580円→上・下650円
[5月22日]
●名作『ぼくんち』(小学館)を生みだした,りえぞお先生の原体験の記録.


つげ義春
『紅い花』
小学館文庫 1996年初版第5刷(1995年初版第1刷) 600円→380円
[5月22日]
●「もっきり屋の少女」所収.わが故郷に「もっきりや」という名の飲み屋があった.でもカウンターにいたのはひげオヤジ.つまりそういうわけだろう.


チェーホフ
『かもめ』
湯浅芳子訳 岩波文庫 1987年第31刷(1976年第24刷改版,1952年第1刷) 200円→100円
[5月27日]
●事件は決して舞台では起こらない.青年団とのシンクロ.


チェーホフ
『ヴァーニャ伯父』
湯浅芳子訳 岩波文庫 1988年第20刷(1963年第9刷改版,1951年第1刷) 200円→?
[6月2日]


チェーホフ
『三人姉妹』
湯浅芳子訳 岩波文庫 1976年第29刷(1964年第17刷改版,1950年第1刷) 100円→?
[6月2日]


レイ・チョウ
『ディアスポラの知識人』
本橋哲也訳 青土社 1998年6月第2刷(4月第1刷) 2800円
[6月4日]
●肯定的に読んだ場合,この問いをまじめに引き受けるのは相当難しい.否定的に読んだ場合…….


N・オットカール
『中世の都市コムーネ』
清水廣一郎/佐藤真典訳 創文社歴史学叢書 創文社 1981年第3刷(1972年第1刷) 1000円→600円
[6月12日]
●名著なのに品切れ.近藤恒一『ペトラルカと対話体文学』からの派生.


四方田犬彦
『電影風雲』
白水社 1993年 5600円→3500円
[6月12日]
●しかし分厚い.どこから読もうか.藤井省三『中国映画を読む本』にて引用の由.


石原慎太郎
『秘祭』
新潮文庫 1998年第2刷(1988年第1刷) 400円
[6月25日]
●新城卓監督「秘祭」の原作.原作者のニュアンス,監督の意図,観客の解釈,三者のズレを体験.


DeMusik Inter. 編
『音の力〈沖縄〉コザ沸騰篇』
インパクト出版会(発売元イザラ書房) 1998年第1刷 2200円
[6月26日]
●いわゆる「島唄」という沖縄民謡は昔からそのままの形で受け継がれてきたわけではない.移民や出稼ぎで沖縄外に出て行かざるをえなかった沖縄人の歴史の中で生まれ,引用され,変化しながらつくられてきたものだ.インタビューが載っている大島保克のアルバム「今どう別り」はそのボーダー感覚の結晶.ちなみにアメリカ占領期の沖縄が舞台の宮本亜門監督「BEAT」では彼の曲が使われ,沖縄民謡の大御所,嘉手苅林昌が出演している.
●「今どう別り」はいいアルバム。拙者のお気に入りも参加している。――庵主


高良倉吉
『琉球王国』
岩波新書 1997年第8刷(1993年第1刷) 640円
[6月27日]
●東シナ海のダイナミクス.


東峰夫
『オキナワの少年』
文春文庫 1980年第1刷 320円→150円
[6月27日]
●「復帰」直前1971年の芥川賞受賞作.





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